HCCリスクを評価するためのHBcrAg
HBcrAg:HCC(肝細胞がん)リスク予測の可能性を有する新規の血清バイオマーカー
Yasuhito Tanaka
Yasuhito Tanaka, MD, PhD

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慢性B型肝炎(CHB)は、世界中で、およそ2億6000万人を冒しています。CHB患者さんの非常に多く(15%〜40%)が肝硬変および/または肝細胞がん(HCC)が発生し、高い死亡率を伴う健康問題にとなっています。

大半の新規B型肝炎ウイルス(HBV)感染は、中国、東南アジア、サハラ以南アフリカなどのHBVが風土病となっている地域で発生します。日本におけるCHBの全体的有病率はかなり低いです(B型肝炎表面抗原 HBsAg の陽性者は2011年におよそ120万人)が、HCCは2016年に、日本男性のがんが原因の死亡率の4番目で、日本女性におけるがんが原因の死亡率の6番目でした。(2016年に日本で報告されたHCCによる死亡は28,528件。) しかし、効果的なHBVにする治療法の開発と、日本、米国、欧州、アジア太平洋地域の臨床科学者からの ルーチンのHCC調査に関するガイダンスを利用可能にすることで、CHB患者さんのHCCによる死亡リスクを減らすことができます。

日本では、患者さんに肝硬変、CHB、または慢性C型肝炎がある場合、 HCCのリスクは高く、CHBおよび/またはC型肝炎と肝硬変の両方がある場合、そのリスクは極めて高いと考えられます。日本肝臓学会は、高リスクの患者さんには、超音波検査と1種類以上の血清バイオマーカーの検査を6か月ごとに実施することを推奨しています(α-フェトプロテイン AFP、des-γ-carboxy-prothrombin DCP、AFP-lens culinarisアグルチニン結合分画 AFP-L3)。リスクが極めて高い患者さんには、超音波検査と共にバイオマーカー検査を3〜-4か月ごとに行うべきであり、オプションとしてのCT/MRI検査は6〜12か月ごとです。小さな結節が検出される場合、血清バイオマーカー(AFP、DCP、AFP-L3)ならびにCT/MRIまたはEOB-MRIも実施すべきです。HBV管理に関しては、現在の目標はウイルス抑制、望ましくはHBsAgの血清クリアランスを達成し、同時に組織学的改善と合併症のリスクを減少させることです。しかしながら、ヌクレオチ(シ)ド(NA)を用いた治療後でもHCCが発生し、どの患者さんに肝臓疾患が進行するかを予測することは困難です。いくつかのHBVマーカーによって、 CHBを有する患者さんにおけるHCCの発生に相関する因子であることが特定されました。

HBcrAg:CHB進行を予測する新規の血清バイオマーカー
ベースラインHBV DNAレベルはHCCリスクの独立した予測因子であることが知られていますが、NAを用いた治療はHBVの複製を抑制するだけで、共有結合閉環状DNA(cccDNA)を直接標的にしません。cccDNAは肝臓にウイルスが持続する原因となる重要な分子であり、肝臓細胞内のcccDNAの量と転写活性がCHB進行と相関しています。B型肝炎ウイルスのコア関連抗原(HBcrAg)は新規の血清バイオマーカーであり、肝臓内のcccDNAレベルと相関し、日本ではCHBモニタリングを援助するために利用されてきました。最近の研究は、CHB患者さんにおける血清HBcrAgレベルとHCC発生の関連性を証明しました。抗逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)(60〜200米ドル/分析)と比較して、HBcrAg分析は簡単に実施でき低費用(15米ドル/分析)であるため、リソースが限定される地域におけるCHB進行をモニターする代替方法となる可能性があります。 CHBを有する人の95%超が低中所得の国々に住んでおり、RT-PCRへの限定的なアクセスと費用が、CHB進行のモニターと世界的な肝炎撲滅達成の主要な障壁となっています。世界保健機構は、活発なHBV複製を測定するために低費用の分析が緊急に必要であることを認識しました。

CHB未治療患者におけるHCC リスク予測のためのHBcrAg
別な大規模、後ろ向きコホート試験においてTadaらは、CHB未治療患者さんにおいて、HCC発生予測にHBcrAgが HBV DNAよりも優れていることを証明しました。平均経過観察期間である10.7年間に、78/1031(76%)の参加者にHCCが発生しました。ここでHBcrAgレベル >2.9 log IU/mL はHCCの発生と関連しており、HRは5.05 (95% CI: 2.40-10.63)でした。

CHB治療歴のある患者におけるHCC リスク予測のためのHBcrAg
研究によって、治療歴のある患者さんにおいては、NA治療によって血清HBV DNAレベルが減少しましたが、HCCのリスクを消失させなかったことが明らかになりました。109例の日本人CHB患者さんを2年以上 NAで治療した臨床研究において、 ホンダらは、HBcrAg陽性がHCCの独立したリスク因子であることを示しました。HBV DNAが検出できない76例のCHB患者さんにNA治療を実施した別の臨床研究では、Cheungらは、治療前後のHBcrAgレベルの中央値が、 HCCのない対応する対照群と比較して、HCCのある群では有意に高かったことを見出しました。最近、Hosakaらは、ベースラインと治療中の血清HBcrAgレベルがHCC発生率を予測するか否かを、NA治療歴があり1年以上治療中の CHB患者さん1268例で調査しました。平均経過観察9年の間に、113例(8.9%)がHCCを発生し、 治療中にHBcrAgレベルの高かった患者さんは、治療中にHBcrAgレベルの低かった患者さんと比べてHCCのリスクが高いことが明らかになりました。

切除またはラジオ波焼灼術後のHCC再発予測のためのHBcrAg
NA治療状態に関わらず、手術後のHCC再発率は高いままであり、報告された再発率2年間で40%を超えています。Hosakaらは、治癒的切除または.経皮的焼灼術後のHCC再発に、HBcrAgが予測価値のあることを証明しました。彼らは、最初のHCの診断時に血清HBcrAgレベルが >4.8 log U/mLであると、その後のHCC 再発の HRが8.96となることに関連することを証明しました。CHB関連のHCC患者さんに対しては、高い血清HBcrAgは再発なし生存率が低いことを証明した、前述のChenらによる研究があります。したがって、手術前のHBcrAgレベルが、手術後調査アプローチを層別化し、HCC再発リスクの高い患者さんを特定するためのバイオマーカーとなる可能性があります。

重要点
機能的な治癒を達成するCHB患者さん(検出不能の血清HBV DNAとHBsAgとして規定される)であっても、 HBVが再活性化し HCCが発生する可能性があります。血清HBcrAg はcccDNAと相関性があり、HBV DNAが検出できなくてもHBcrAgは検出できる可能性があるため、HBcrAg-陽性と HBcrAg-陰性生患者さんを比較する前向き試験を実施する正当な根拠があります。最近、予測バイオマーカーとしてのHBcrAgへの関心が高まってきていますが、大半の報告はアジアの国から発表されました。HCCの有無にかかわらず患者さんを対象とする大規模コホートの試験が、さらに別の地域でも実施されるべきです。

皆様のお考えは?
CHB患者さんにおけるHCCリスクを評価するために血清バイオマーカーをお使いですか?CHB-関連のHCCを切除後、HCCの再発リスクをどのように予測されますか?お考えを共有し、コメントセクションで説明してくだされば幸いです。

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